スカトロ官能小説

2話 悲劇の脱糞

ハメスカ

 

 

「うう……。堀内くん、絶対に見ないでね。耳もふさいでて」

 

 泣きべそをかきながら、先輩が訴える。美しかった顔はもう涙でぐちゃぐちゃだ。

 

「もちろん約束します」

 

 俺は目を閉じて壁の方を向き、両手で耳もふさいだ。しかし、足踏みをする振動から、先輩の迷いやためらいがありありと伝わってくる。

 

 そこでふと思いついた。せめて俺のスーツをカーテン代わりに使ってもらおうと。

 

 口を開こうとして、同時に目も開けてしまった。どうせ後ろを向いているのだからと、きつく目を閉じてはいなかったのだ。

 

 しかし、そこにあったのは壁ではなかった。

 

 鏡だ。

 

 ちょうど、先輩がスカートの中に手を入れたところだった。

 

 あっ、と思ったが、体が石になったように動かない。俺が思考停止している間に、先輩はするっと下着をおろしてしまった。

 

 ――ピンクだ。

 

 もはや目を閉じることもできず、その光景にくぎ付けになる。

 

 先輩がエレベーターの角に尻を向けてしゃがみ込んだ。そして、スカートをめくり上げた。つるんとした美しい尻が俺の目から丸見えになる。

 

 恥辱に耐える横顔はただただ必死で、俺が目を開けていることにも気づく様子はない。

 

「くっ……」

 

 いつの間にか耳を押さえていた手も緩んでおり、俺の聴覚が先輩の苦悶の声を拾った。

 

 彼女はなおもためらっているようだった。

 

 しかし、いつまでもこらえられるものではない。

 

 やがて、固くしめられた肛門をこじ開けるように、ぶぴっと茶色い液体が噴き出した。

 

「ああっ」

 

 そして、止まらなくなった。

 

 ぶぶ、ぶりぶりぶふっ、ぶっ、ぶ

 

 空気交じりの軟便が、汚い音とともにひり出される。それはびちゃびちゃと床に落ちて、汚れひとつなかった先輩の靴に染みを作った。

 

 可憐で美しく、誰にでも優しい純香先輩。笑顔は花開くように眩しくて、どんな仕草にも品がある。そんな彼女は俗世にうごめく人間たちとは別の存在なのだと思っていた。

 

 その先輩が、汚さの象徴ともいえる物体を尻からあふれさせている。液体の中に固形物が混じった茶色い便は、凝視すると吐き気を催すほどにおぞましかった。

 

 そして、俺の鼻を形容しがたい悪臭が襲う。下痢をしているのだから仕方ないのだが、純香先輩の便は強烈なにおいを放っていた。

 

 臭い。臭すぎる。

 

 それを出したのが純香先輩でなければ、俺はこの臭いだけでとっくに嘔吐していただろう。

 

「ぐす……、ひくっ」

 

 臭いのきつさが自分でもわかったようで、先輩の嗚咽が次第に大きくなっていく。

 

 ぶっ

 

 ぶりぶりぶりっ

 

 大きな放屁のあとで、さらに追加の便がひり出された。その細い体のどこに詰まっていたのかと思うほどの量だ。実際に先輩の尻から出てくるところを見ていなければ、豚の糞だと言われた方が信じられただろう。

 

 純香先輩は、自分の排泄物でできた茶色い水たまりの上にしゃがみ込んでいる。

 

 決して手の届かない高嶺の花だと思っていた彼女は、俺の目の前で家畜程度の立場にまで落ち切ったのだ。

 

 長い排便がようやく終わった。

 

 純香先輩は黙って下着を上げると、自分の出した大便からよろよろと離れた。

 

 そして、

 

「っ、うわぁぁぁぁぁ!」

 

 そのまま床に崩れ落ち、大声を上げて泣きわめいた。

 

 俺はかける言葉もなく、床に伏して泣く純香先輩を見つめるしかなかった。

 

 彼女と同じ空間にいるというのに、シトラスミントの香りはもうない。

 

 

 

 鼻が曲がるほどの悪臭が立ち込める空間で、どれだけ待っただろう。

 

 俺も純香先輩も受けたショックが大きすぎて、排泄物をおおい隠すことすら思いつかなかった。

 

 鏡を向いて立ちっぱなしの俺は、ときどき確かめるように純香先輩の下痢便に目をやった。

 

 純香先輩は壁に背を預けて坐ったまま、微動だにしない。深く項垂れているせいで、髪に隠れた表情をうかがい知ることはできなかった。

 

 時計が11時を回るころになって、静止していたエレベーターがガクンと揺れた。ついに故障が治ったのだ。エレベーターはゆっくりと上昇を始める。

 

「いや……」

 

 純香先輩が、消え入るような声で呟いた。

 

 そう思うのも仕方ない。待ちわびたはずの復旧は、今や公開処刑にも等しいのだから。

 

 扉の外では、少なくない人間が待っているだろう。そこにいる全員に、この排泄物の臭いをかがれ、汚い姿をさらすのだ。そして、誰かがこれを片付けることになる。

 

 エレベーターはどんどん昇っていく。

 

 俺たちの職場がある階に向かっているのだと、気づいたときには手遅れだった。慌てて一つ下の階のボタンを押すも、エレベーターはそこを素通りした。

 

 最悪のパターンだ。

 

 エレベーターが停止し、扉が開きかける。

 

 俺は閉めるボタンを叩くように押した。しかし、扉が完全に閉まるより早く、隙間に人の手が差し込まれる。

 

「開けないでください!」

 

「どうしたんですか!?」

 

 作業着を着た男が、無理やりエレベーターをこじ開けた。

 

「うっ」

 

 臭いをかいだのだろう。男が息を止めて顔をしかめた。

 

 彼の後ろから、まだ事情を知らない者たちが近づいてくる。

 

「純香、平気だった?」

 

「純香先輩、大丈夫ですか?」

 

 先輩と仲のいい女子社員たちだ。さらに、俺たちの上司までが心配そうにこちらを見ている。

 

「来ちゃダメです!」

 

 が、俺の言葉は今度も無視された。

 

「あっ、純香体調悪いの?」

 

 うずくまる純香先輩を見た彼女たちは駆け寄ってくる。そして、当然臭いに気づいた。

 

「わ、なにこれ」

 

「くさい!」

 

 皆が立ち止まり、それ以上近寄ろうとはしない。ひとりはハンカチを取り出して鼻にあて、比較的遠くにいる上司も鼻をつまんだ。

 

 このままでは、純香先輩が会社中のさらし者になってしまう。そう感じた俺は、もうどうにでもなれと口を開いた。

 

「ごめんなさい! 俺がうんこを漏らしてしまいましたぁあ!」

 

 そう言って90度に腰を折る。無理に叫んだせいで声が裏返り、言葉の内容と相まって情けないことこの上ない。

 

 すべての泥を俺がかぶってやるつもりだった。ただ、問題なのは純香先輩が肩を震わせて号泣していることだ。その姿を見て、誰が俺の言葉を信じるというのだ。

 

「俺のせいで先輩にまで大変な思いをさせてしまい、本当に申し訳ありませんでした!」

 

 せめて建前だけでも、俺がやったことにしておいてくれ。シトラスミントの清純を守りたいんだ。

 

 凍りついた空気の中、やけくその謝罪ばかりが虚しく響いた。

 

 

 

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※動画はイメージです。小説の登場人物とは一切関係ありません。