アブノーマル官能小説

性病フェチ医B

 

 いつものように香織のアパートを訪ねようとした。だが、香織の携帯は圏外で、連絡が取れない。

 

 このようなことは初めてなので、原田は怪訝に思った。それに、なんとなく嫌な予感がする。用事などで出られないだけの可能性もあったが、原田はとりあえずアパートに行ってみた。

 

 持っていた合鍵で中に入る。

 

「香織、いないのか?」

 

 廊下の電気をつける。

 

「香織……!」

 

 白い光に照らされた先には、倒れて動かない香織の姿があった。駆け寄ると、かろうじて胸が上下しているのがわかる。

 

 ついにこのときが来たと、原田は全身に鳥肌が立つのを感じた。

 

 力なくのばされた腕をとる。握った瞬間にわかるほどの高熱だ。手首の内側から触れる脈は1分間に90を越えている。死の直前になって生き急いでいるみたいなリズムだ。

 

 原田は意識を失った香織を抱き上げた。

 

「う……」

 

 香織は眉を顰めたが、目を覚ます気配はない。

 

 原田は香織をベッドに運び、横たえた。

 

 整頓好きの香織にしては布団が乱れている。おそらく、誰かに助けを求めるためにベッドから這い出してきたのだろう。しかし、その前に力尽きたようだ。

 

 原田はテーブルの上にあった香織のスマートフォンを手に取った。電源をつけようとしたが、電池が切れている。香織は電話を充電することもできないほどの状態で寝込んでいたのだろう。

 

 香織は長くは持たない。原田はそう判断を下した。抗菌薬による治療を今から行うこともできるが、最初からそのつもりはない。

 

 原田は香織の部屋着を脱がして全裸にした。何日も入浴していないからか、ほんのり汗の臭いがする。

 

「あぁ……さむ……」

 

 香織はうわごとを呟き、両腕で自分自身を抱き締めた。

 

「大丈夫、すぐにあたためてやるよ」

 

 原田も服を脱ぎ、香織と同じ布団に入った。

 

 発熱は40度近くあるだろう。抱き締めた体は熱いくらいだ。

 

 腕の中で、香織は早い呼吸を繰り返す。

 

 原田は片手で胸を揉みしだきながら、もう片方の手を陰部に伸ばした。ねっとりと粘ついたものが指先に触れる。

 

 香織の陰部は、どろどろに濡れていた。布団から手を出してみると、指についているものはおりものというより膿に近い。つんと鼻を突く悪臭もある。

 

 原田は嬉しくなって、その膿を舐め取った。生臭く、塩気のきいた味だ。

 

 今香織の腹を裂けば、このような膿がたくさん詰まっているだろう。淋菌はついに香織の生殖器を食い破り、内臓までを侵しているのだ。そして、菌は血流にのって全身にも回っているだろう。

 

 愛しい香織。性病の果てに死にかけている女は、なんと美しいことか。

 

 体の隅々まで愛撫する原田の手つきを感じたかのように、香織が意識を取り戻した。

 

「せんせ……?」

 

「ああ、俺だ。来てやったぞ」

 

「よかった……。わたし、おなかがいたくて、しんでしまいそうなんです……」

 

 香織は苦悶の表情を浮かべて原田にすがる。

 

「待っていなさい。すぐに治してあげるから」

 

 原田はカバンから注射器を取り出し、香織の腕に痛み止めの注射を打った。

 

「せんせ、ありがとうございます……」

 

 このような状態になった原因が原田にあることも忘れ、香織は感謝の言葉を口にした。

 

「ほかに欲しいものはあるか?」

 

「おみず、ください……」

 

「わかった」

 

 原田は冷蔵庫からミネラルウォーターを持ってきた。自力では飲めそうにないので、口移しで飲ませてやる。

 

 乾いて割れた唇で、香織は貪るように水を吸った。まだこれほどの生命力が残っている。まき散らされた菌を排除することもできない体が、それでも必死に生きようとしているのだ。

 

 欲しがるだけ水を与えたあと、原田は香織と舌をからめた。40度の熱い舌は、ほかで味わうことのできない特別な感覚だった。

 

 香織の意識が、再び遠のきかけてきた。

 

「香織?」

 

「ん……」

 

 とろんと目を閉じかけていた香織が、原田の声に呼び戻される。

 

「何か言いたいことはあるか? 私にでなくてもいい。家族や、友人には?」

 

「んー」

 

 香織は眠そうなまばたきを繰り返しながら、しばらく考えていた。そして、ゆっくりと口を開いた。

 

「おとうさんとおかあさんのいうこと、きいてればよかった……」

 

「そうだな。家に帰りたいか?」

 

「かえれません……。こんなからだで……びょうきが、うつってしまう……」

 

「病気を治したいか? 元気になって、お父さんとお母さんに会いたい?」

 

「…………」

 

 ため息のように長く息を吐いて、香織は沈黙した。舞台の幕を下ろすように、時間をかけてまぶたが落ちていく。

 

「香織?」

 

「ん……。わたし……どうしていえ、でたの……」

 

「歌手になりたくて飛び出してきたんだろ?」

 

「せんせ……そばにいる……?」

 

「ああ、ここにいるさ」

 

 だんだん会話が成り立たなくなってきた。意識がもうろうとしているようだ。

 

「わたし……せんせいが、いないと……いきて……いけません……」

 

 半開きのまぶたの中に光るものが見えた。

 

「香織、愛している」

 

「せんせ……」

 

 ふっと瞳が閉じ、ひとつぶの涙が頬を伝った。香織が二度と目を覚まさないであろうことが、原田にはわかった。

 

 布団をめくり、美しい裸体を目に収める。まだ心臓が動き、血が流れている最後の姿だ。

 

 原田はそっと香織の脚を開いた。赤い性器からは大量の膿が垂れ流されている。いつも炎症を起こしていたバルトリン腺は、両方とも腫れあがってはじけそうだ。

 

 それは、欲情をそそる完璧な性器の姿だった。

 

 原田は硬く勃起したペニスを、香織の病巣に挿入した。粘度の高い液体と、壊れて柔らかくなった肉癖が、原田のものを包み込む。

 

 腰を動かすと、腫れたふたつのバルトリン腺が性器をしごいた。原田にとっては、この世に類を見ない名器だった。

 

 にゅるり、ぐちょりと、半ば融解しかかった膣をかきまわす。こんなにも熱く、とろけるような性交は初めてだった。

 

 ほどなくして原田は果てた。

 

 性器から血混じりの膿を流す香織は、もう息をしてなかった。

 

 

 

  完

 

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榮倉彩